米国株紹介 Pinterest (PINS) 検索エンジンとソーシャルメディアの中間に存在するユニークなサービス|銘柄分析

Pinterest(ピンタレスト)は、ユーザーが趣味や日常の風景、料理やインテリア、結婚式など様々なイベントのアイデアを写真や動画で閲覧・保存・管理できるSNSです。サービス内ではショッピング機能なども提供されており、昨今盛り上がりを見せているD2C (Direct To Consumer)の用途でも多くの企業に利用されています。コロナ禍のEC需要増加でショッピング機能やShopify(SHOP)との連携が追い風となる可能性が高く、注目度の高い銘柄です。

この銘柄のポイント
  • 従来のテキストベースの検索では得られない体験を提供
  • 手作業で選ばれ、保存され、整理されてきたデータを活用
  • 月間4億人を超えるアクティブユーザー
  • グローバルシェアは拡大中、収益面は伸び代あり

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企業情報

  • 名前:Pinterest, Inc.
  • ティッカー:PINS
  • 取引所:NYSE
  • 設立:2008
  • 業界:インタラクティブメディアとサービス
  • セクター:メディア
  • 時価総額:$ 23.307b
  • 発行済株式:600.55m
  • ウェブサイト: https://www.pinterest.com

競合他社

  • Facebook(FB)
  • Twitter, Inc.(TWTR)
  • Snap Inc.(SNAP)

プロダクト / 事業内容

Pinterestは、アイデアを画像検索できるビジュアルディスカバリーエンジンを提供しています。人生のインスピレーションを得るために世界中で4億人以上の人々がこのサービスを利用しています。夕食を作ったり、着るものを決めたりといった日常的な活動から、家をリフォームしたり、マラソンのトレーニングをしたりといった大きな約束事、フライフィッシングやファッションといった継続的な情熱、結婚式や夢の休暇を計画するといった節目のイベントまで、想像できることなら何でもアイデアを見つけに来ています。

Pinterestは、ユーザの個人的な好みや興味に基づいて、視覚的なレコメンドを表示します。ユーザはこれらのレコメンドをボードと呼ばれるコレクションに保存し、整理します。視覚的なアイデアを閲覧したり保存したりすることで、ユーザは自分の将来の姿を想像することができ、インスピレーションから現実へと導くことができます。

Pinterestはユニークなサービスです。消費者向けのインターネット企業の多くは、ツール(検索、eコマース)かメディア(ニュースフィード、動画、ソーシャルネットワーク)のどちらかです。Pinterestは純粋なメディアチャンネルではなく、純粋なユーティリティでもない。他の多くのプラットフォームでは対処されていない、広く普及している消費者の問題を解決することで、感情的なニーズと機能的なニーズの両方を満たします

検索からビジュアルディスカバリー(視覚的発見)へ

検索は、人々が個別の情報を素早く見つけるのに役立ちますが、探しているものが正確にわからない場合や、言葉で説明できない場合、あるいは自分の好みに合わせたものを探している場合には、適切なツールとは言えません。

Pinterestのユーザは何かを購入したいが、どの製品やサービスが自分のニーズや好みに最も適しているかをまだ決めていない場合に、ビジュアルディスカバリー(視覚的発見)を求めてサービスを徘徊することが多いです。その際、人々は積極的に関連性のあるコンテンツをサービスに求めており、広告主はそれを提供することが多くなっています。このようにPinterestユーザと広告主の目的が根本的に一致していることが、Pinterestを他のサービスと差別化しています。

独自の価値

Pinterestが挙げている独自の価値はいくつかありますが、ここではその中で特に重要そうな3つをピックアップします。

ビジュアルエクスペリエンス

人は自分の欲しいものを言語化できなくても、それを見たときに欲しいものだと認識できます。これがPinterestを視覚的な体験の場にした理由です。画像やビデオは、言葉では説明できないコンセプトを伝えることができます。これは従来のテキストベースの検索クエリでは提供できない体験です。

ヒューマンキュレーションとパーソナライゼーション

Pinterestはキュレーションのもとに成り立っています。大半のPin(≒お気に入り登録)は、何億人ものPinterestユーザが何十億ものボードを作成し、何年にもわたって手作業で選ばれ、保存され、整理されてきたものであり、Webのクロールやインデックスの結果ではありません。この生きたデータ資産を基に機械学習とコンピュータビジョンを通してコンテンツに反映されているアイデアや美学との関係を理解し、ユーザがどのようにアイデアを整理しているのかを教えてくれるので、どのようなコンテンツが参考になり、関連性があるのかを予測しやすくなり、高い精度でリコメンデーションできます。

行動のためのデザイン

人々は、自分の将来の姿を視覚化し、夢を現実のものにするためにPinterestを利用しています。例えば、購入すべき商品、レシピの材料、プロジェクトの立ち上げなど、ピンが役に立つ情報源にリンクすることでユーザがアクションを起こしやすくなり、サービスで発見した商品やサービスを購入してもらいやすくなります

収益モデル

Pinterestの収入源は広告です。標準的な広告フォーマットは、プロモートピンといい、1枚の画像、画像のカルーセル、または動画のいずれかで表示することができます。通常のピン同様のビジュアルスタイルを反映し、デザインは完全に統合されています。ユーザーは、ホームフィードや検索結果をスクロールして、インスピレーションやアイデアを探しているときに、自然とプロモーションピンを見ます。

広告主はオークションベースのシステムで広告枠を購入します。Pinterestの広告システムは広告主のビジネス成果を最適化しながら、適切なタイミングでユーザにに広告を配信することができます。

昨今ではショッピング機能にも注力しており、アイテムをタグ付けすることで、インタラクティブにECサイトから商品を購入できるアイテムタグ広告やカタログ機能、ショッピング広告など次々と機能を追加し、先日はShopifyとの連携も開始されました。

Pinterest 、Shopify アプリの導入を開始
スモールビジネスの応援や自宅の設備充実、または子供たちと楽しむアクティビティのアイデアを求めて、かつてないほど多くのユーザーが Pinterest にアクセスしている今、ショップにとっては Pinterest ユーザーに商品を見つけてもらえるチャンスがますます増えています。 Pinterest は、100 万以上の S...

市場シェア

Pinterestは現在、米国で3番目に大きなソーシャルネットワークです。月間4億人を超えるアクティブユーザーにリーチし、サービス開始時より多くの女性からの支持を受け、今でも利用率の 60% 以上を女性が占めています 。Z世代とミレニアル世代のユーザー数の伸びが、月間アクティブユーザー数の増加に大きく起因しました。男性ユーザーの数が前年比で 50% 近く急増したこともこの成長に貢献したと言えます。

400MAU
https://newsroom.pinterest.com/ja/post/pinterest-tops-400-million-monthly-active-users-with-gen-z-men-and-millennials-driving-growth

Pinterestはヨーロッパでも人気があり現在も尚ユーザー数が拡大しています。又、アジア地域でもユーザーの拡大に投資しており、米国を除いた全世界のユーザー増加率は前年比49%増となっています。

競合

競合相手は主に、ツール(検索、eコマース)またはメディア(ニュースフィード、動画、ソーシャルネットワーク)のいずれかである消費者向けインターネット企業と競合しています。Amazon、Facebook(Instagramを含む)、Google、Snap、Twitterなどの大規模で確立された企業と競合しています。特にD2Cにおいて、Instagramの「ShopNow(ショッピング機能)」や先日リリースされた「Instagramショップ」は脅威となり得ます。

過去の利益と売上予想

CAN-SLIM

名著「オニールの成長株発掘法」が提唱するCAN-SLIMを基に高い成長力を秘めてる成長株か判断していきます。

CAN-SLIMとは?

上場して比較的日が浅い成長企業に対してこれから成長が期待できる企業か判断するために、過去に上手くいったケースをルール化してまとめたものです。それらの頭文字を合わせたものをCAN-SLIM(キャンスリム)と呼びます。

C = Current earnings(当期利益が良いか?)
A = Annual earnings(通年の利益が良いか?)
N = New product or service(新製品・新サービスを出しているか?)
S = Supply and demand(その銘柄の需給関係が良いか?)
L = Leader or laggard?(その銘柄が相場の先導役か?出遅れか?)
I = Institutional sponsorship(機関投資家に好まれているか?)
M = Market(一歩さがって相場全体の地合いは良いか?)

これらルールに設けられた背景をより詳しく理解したい方は本著を一読することをお勧めします。

これらを満たしていれば、高いパフォーマンスあわよくばテンバガーを狙える可能性がありますが、昨今のハイテク銘柄を中心とした成長株の勢いはオニールが提示している指標を優に超える銘柄も多いため、当記事ではオニールが提示している指標より高い数値を設定しています。又、後半のSLIMについては長くなってしまうため割愛させていただきます。

Current earnings(当期利益が良いか?)

  • ❌️ 前年同期比で売上高が40%以上増加しているか
  • ⭕️ 前年同期比でEPSが40%以上増加しているか
  • ❌️ 直近3四半期で売上高が加速度的に増加しているか
  • ❌️ 直近3四半期でEPSが加速度的に増加しているか
  • ⭕️ 直近四半期の粗利率が70%を超えているか

Q220の資料で売上高とMAUの推移を比較してみると、コロナ禍の広告収益モデルではMAUが増加しても売上が戻ってこない状況であることが伺えます。しかしその中でもInternationalセグメントにおいては、売上高前年同期比+72%と高い成長率となっており、ローカライズ戦略による成長の方が勝っているようです。MAUの比率を考えると引き続き売上増加が見込めそうです。

ちなみにコロナ禍の新しい生活習慣の中で家庭料理やDIY、アクティビティなどインスピレーションを求めるユーザが戻ってきているとのことです。又、ショッピング機能の需要と利便性の向上により、カタログのアップロード量は前四半期比と比べて350%以上増加し、2020年上半期にはショッピング専用画面を訪れたユーザーの割合が50%以上に増加しています。この進展は、PinterestがEコマースサイトとは根本的に異なる体験を消費者に提供しているという事実を強調しています。

Annual earnings(通年の利益が良いか?)

  • ⭕️ 過去3年間で売上高が40%以上増加しているか
  • ⭕️ 過去3年間でEPSが40%以上増加しているか
  • ⭕️ 過去3年間で売上高が加速度的に増加しているか
  • ⭕️ 過去3年間でEPSが加速度的に増加しているか

2019年4月にIPOしたPinterestは、コロナウィルスの影響で直近四半期の成長率はぱっとしない数値となっていますが、通年では前年比+50%を超える高い成長率を示しています。2020年は流石に落ち込むと思いますが、今後ショッピング機能などの追加により、中小企業の参入が増えることでローカライズの課題が解決され比率の高い米国以外でのマネタイズが成功するか要注目です。

New product or service(新製品・新サービスを出しているか?)

  • ⭕️ 新興企業or新経営陣
  • ⭕️ 新製品・新サービス
  • ⭕️ 新高値
https://finviz.com/quote.ashx?t=pins

株価としてはコロナウィルス前の価格から更に上昇し、EC需要のトレンドも追い風となり新高値を更新しています。先日の下落相場で下がったものの上値のトレンドもブレイクし、更に高値を更新してきそうな雰囲気もありますね。

アナリストの予想

まとめ

Pinterestは、ユーザの頭の中にあるイメージとモノ・コトのすり合わせができるマッチングツールのような印象を受けました。モノ・コトの裏には企業が存在し、企業がコンテンツに”行動”の導線を紐付けることで、ユーザが求めていたものとマッチした際にシームレスに”行動”に移しやすくなる。つまり、マネタイズが企業の儲けだけではなくユーザ体験の向上にも繋がり、win-winなプラットフォームとなっています。そういう意味でも既存のSNSとは立ち位置が異なり、ユニークなサービスであることが理解できます。

アップデートで似た機能をもつInstagramは本文中でも脅威と表現しましたが、ユーザの使い方で棲み分けされそうです。

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米国では既に3番目に大きいソーシャルメディアという現実がそれを裏付けているのかもしれません。

少し気になるのが、収益源が広告のみでいくらeコマース連携やショッピング機能を強化しても収益にならない点と、精度の高いレコメンドにより広告の競争力が低下するのではないかという点です。

ただ、これらは検索エンジンとSNSの中間的存在を確立することを目指していることを考えると、前例(GoogleやFacebook)があることから気にせずじっと見守っていればよいのかもしれません。

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