米国株紹介 Fastly (FSLY) 次世代CDNエッジクラウドプラットフォームで高速な配信を実現|銘柄分析

Fastly (ファストリー) は、高速・安全・スケーラブルなエッジクラウドプラットフォームを提供している急成長中の会社です。CDN業界では業界最大手のAkamaiを飛ぶ鳥を落とす勢いで追い上げている大注目の新興銘柄です。

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企業情報

  • 名前:Fastly、Inc.
  • ティッカー:FSLY
  • 取引所:NYSE
  • 設立:2011
  • 業界:インターネットサービスとインフラストラクチャ
  • セクター:ソフトウェア
  • 時価総額:93.17億ドル
  • 発行済株式:103.94m
  • ウェブサイト: https://www.fastly.com

主要な競合他社

  • 【CDN】Cloudflare
  • 【AKMI】Akamai
  • 【AMZN】Amazon(AWSで提供しているCloudFront)

エッジクラウドプラットフォームとは

エッジクラウドプラットフォームの「エッジ」とは、コンピューターネットワークの端を意味します。エッジ(端)にあるのはスマートフォンやパソコン、AlexaなどのIoT製品や自動運転車といった受信側のことで、これまではこのエッジとデータを処理するデータセンターが直で送受信していました。しかし、大量のデータ送受信や処理が必要となっている昨今ではデータセンターで集中処理をする従来の仕組みでは効率が悪く、処理能力の低下や距離ロスによるネットワーク速度の低下が問題となってしまいます。

そこでキャッシュ(一時保存)機能を備えた専用のサーバーを世界中に分散配置し、エッジからのリクエストを一番近いサーバで返すことで負荷分散と距離ロスによるネットワーク速度低下を無くす仕組みが生まれました。これをCDN(Content Delivery Network)といい、これまでAkamaiやCloudflareを始めとした多くの会社が提供してきました。

Fastlyが掲げるエッジクラウドプラットフォームとは、このCDNに加えてビデオやストリーミングなどの大容量コンテンツの配信やエッジコンピューティング(クラウド上でのプログラム実行の仕組み)、クラウドセキュリティなどを一挙にまとめたサービスを示しています。

既に多くの有名企業が導入しており、日本でも導入実績ページにピックアップされているメルカリ、楽天、サイバーエージェント、日経をはじめとしたWebサービスを提供している企業を中心に幅広い会社規模で採用されています。

導入事例 Fastly公式ページ – https://www.fastly.jp/industries

Webサイトにおいて表示スピードの立ち位置は”ユーザ体験”のひと言に収まらず、購入率や検索エンジンの順位など多くの要素にシビアに響いてくる重要な項目となります。表示スピードが速くなり、セキュリティ面もフォローできるこのサービスは世界中に多くのユーザがいるような企業にとっては必要不可欠なものとなっています。

今後は5Gによる更なるデータ量の増大やそれに伴う自動運転・AR・VRの進化にとって特に重要なサービスとなり、高いパフォーマンスを期待できる企業です。

CAN-SLIM

名著「オニールの成長株発掘法」が提唱するCAN-SLIMに沿ってグロース銘柄に値するかみていきます。CAN-SLIMに満たしていれば成長株と言えるので、高パフォーマンスあわよくばテンバガーを狙える可能性があります。

CAN-SLIMとは

上場して比較的日が浅い成長企業に対してこれから成長が期待できる企業か判断するために、過去に上手くいったケースをルール化してまとめたものです。それらの頭文字を合わせたものをCAN-SLIM(キャンスリム)と呼びます。

C = Current earnings(当期利益が良いか?)
A = Annual earnings(通年の利益が良いか?)
N = New product or service(新製品・新サービスを出しているか?)
S = Supply and demand(その銘柄の需給関係が良いか?)
L = Leader or laggard?(その銘柄が相場の先導役か?それとも出遅れか?)
I = Institutional sponsorship(機関投資家に好まれているか?)
M = Market(一歩さがって相場全体の地合いは良いか?)

このルールを基に分析を進めていくため、これらが設けられたバックグラウンドをより詳しく理解したい方は本著を一読することをお勧めします。

以下のルールでは各々の指標を満たしているかを確認していきます。オニールが提示している指標から少しアレンジしていますが、ハードルは上げています。

Current earnings(当期利益が良いか?)

  • YoYで 売上高40%以上 増加しているか
  • YoYで EPS40%以上 増加しているか
  • 直近四半期 の 粗利率70% を超えているか

    ※ YoY = 前年同期比EPS = 1株当たりの純利益
売上高の推移

つい先日のQ2決算発表では売上高が約75百万ドルで売上高成長率は62%、EPS成長率も113%と非常に大きい数値を出しています。リクエスト数に応じた従量課金制のため、コロナの影響で人々のインターネット利用率が上がったことが追い風になっていますね。

以前から40%前後で成長しており、もしコロナが落ち着いてきても今回の一件で多くの事業でオンライン化の需要が加速している中、これからも高いパフォーマンスでの成長が見込めそうです。Shopify【SHOP】を筆頭にFastlyを採用しているグロースハイテク株が成長するほど恩恵を得るのがこの会社です。オンラインの運送会社とも言えますね。

粗利率は60%と指標の数値から10%足りませんが、世界各地に設備投資が必要ながらも効率良くで利益を生み出せていることが伺えます。右肩上がりで推移していることは好感を持てます。

Annual earnings(年間の利益が良いか?)

  • 過去3年間で 売上高 が 40%以上 増加しているか
  • 過去3年間で EPS40%以上 増加しているか
  • 過去3年間で 売上高加速度的 に伸びているか
  • 過去3年間で 営業利益25%以上 増加しているか
  • 年間で ROE17% を上回っているか

    ※ ROE = 自己資本利益率

Fastlyは2019年5月に上場したばかりで未だ一年しか経っていないことからEPSの推移を見て判断するのは少し難しいです。又、グロース株の多くは粗利益(売上から原価を引いた利益)を自社の事業領域に関する研究や新技術の開発などの投資、マーケティング費用などの投資資金に回す傾向にあり、純利益を用いた指標は参考になりづらい部分があります。

その為、ここでは売上高が加速度的に伸びているか、粗利益(売上総利益)が減っていないかに注目します。

https://jp.investing.com/equities/fastly-inc-financial-summary

上記の表から売上高・粗利益共に継続して前年比40%ほど増加していることが確認できます。高い成長率にも関わらず、少しですが加速度的にも伸びていますね。

New product or service(新製品・新サービスを出しているか?)

  • 新興企業、新製品、新経営陣、新高値 の何れかを満たしているか

Fastlyは設立されてからまだ10年も経っていないため新興企業に含まれるのではないでしょうか。そして、何よりもエッジクラウドプラットフォームという既存のCDNから進化したサービスを提供していることがとても重要です。

新経営陣という意味では2020年2月にCEOが交代しました。この人事に対しての善し悪しはわかりませんが、技術者が技術職に戻るのは好感を持てます。その際に前CEOが書いたブログがこちらです。

Reflecting on the last nine years, and Fastly’s new CEO
I am stepping into the role of Chief Architect and Executive Chairperson, and Joshua Bixby will become our new CEO. Growth and change have always come hand-in-h...

新高値、これは成長銘柄を選ぶ上では欠かせない項目です。コロナショック後の割高ハイテク株相場の中、株価が一時5倍にも膨れ上がっていたこともあり2020年8月9日時点では大幅下落で落としているものの、うなぎ登りで更新してきました。これをイレギュラーな伸びとして捉えるかは人それぞれかと思いますが、コロナがなければ順調に5Gや自動運転のシェアが拡大し、Fastlyにプラスに働いていた可能性もあるため遅かれ早かれ伸びていた銘柄ではないかと個人的には思います。

ここまで CAN-SLIMCAN を見てきましたが、SLIM は別の機会にしようと思います。

まとめ

コロナの影響であらゆる業態でオンライン化の取り組みが始まっておりインターネットの需要は更に加速しました。世界中の人がオンラインに移っている状況下ではユーザを多く抱えてるサービスほどCDNを利用しないと負荷分散がしづらく、サーバスペックを拡大するとコスト効率が悪化します。個人ウェブサイトや小中規模のサービスであれば安価なCloudflareやAkamaiを利用すればよいと思いますが、大規模なサービスほど応答速度や効率の良い分散、遅延の少ない仕組みを必要とするはずです。その場合、一番最良な選択はFastlyなのです。

デメリットでよく費用面での導入コストが高いという意見を耳にしますが、最良なサービスを提供していればお金を持っている顧客が集まるので寧ろ効率的ではないかと私は思っています。エッジサーバも有限なので利用者が増えることで理論上パフォーマンスは少なからず落ちます。そのため、フリーミアムや価格競争で顧客を獲得するのではなく、技術で勝負して質の高い顧客をしっかり獲得している現状に魅力を感じています

では、いますぐ買うのか?それはもう少し様子をみてもいいかもしれません。2020年8月9日現在では割高ハイテク株の相場(及びコロナ特需相場)に調整が入った様子もあり、以前ほどの割高感はなくなりましたがグロース株のPSR*の相場である10~15倍からはまだ倍近くあります。PER*が15倍まで下がると株価は$44とこのバリュエーションに戻るリスクも考えられます。

2020年8月9日現在の株価の動き(PSR*は直近四半期を用いた値)

インターネットが普及してきた現在ではハイテクグロース株はこれまでよりも成長速度や需要が高くなることが期待できますが、このことが株式相場と必ずしも連動しないので難しいのが株式投資ですね。

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