米国株紹介 Sea Limited. (SE) ゲーム・eコマース・フィンテックで急成長中の東南アジア最大ハイテク企業|銘柄分析

Sea Limited(シー・リミテッド)はゲーミングの『Garena』eコマースの『Shopee』フィンテックの『SeaMoney』の3つをコアビジネスとしている東南アジア(シンガポール、インドネシア、ベトナム、マレーシア、タイ、台湾、フィリピン)最大のテック企業です。

コロナ禍により巣ごもり、ネットショッピング、非接触決済の需要が高まっている中で強い追い風を受けて急成長中の注目銘柄です。

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企業情報

  • 名前:Sea Limited
  • ティッカー:SE
  • 取引所:NYSE
  • 設立:2009
  • 業種:インタラクティブホームエンターテイメント
  • セクター:メディア
  • 時価総額:744.48億ドル
  • 発行済株式:487.74m
  • ウェブサイト: https://www.seagroup.com

競合他社

  • 【BILI】Bilibili Inc.
  • 【HUYA】HUYA Inc.
  • 【SOGO】Sogou Inc.

事業内容

Sea Limited(シー・リミッテッド)は、もともとGarenaの名前でゲーム会社として設立されました。その後、事業多角化とIPOを見据えてSea Groupの持株会社の社名をSea Limitedに改称し、Garenaはブランド名として使われることとなりました。現在は、eコマースとフィンテック事業の3つのコアビジネスを展開しています。

ここから各サービスについて深掘りする予定でしたが、デジタル経済メディア『AION』さんの記事でとても細かくまとめられているので、この記事では概要のみをざっくりとまとめたいと思います。

Sea Limited ゲーム・eコマース・金融に跨る東南アジア最大テック企業
シンガポールのSea Groupは、ニューヨーク証券取引所上場の東南アジア最大のテック企業です。ゲーミングのGarenaとeコマースのShopee、フィンテックのSeaMoneyを手掛けている、テンセント支援の企業。東南アジアにおける中華テックのモデルの「翻訳者」の性質をもちます。

ゲーミング 『Garena』

Garena(ガレナ)は、東南アジアを代表するゲームプラットフォームです。Steamのようなオンラインゲームのダウンロードと、友人とのチャット、ゲームの進行状況や実績の確認を行えるソーシャルゲーミングプラットフォーム「Garena+」を提供しています。

Garena+では自社開発のゲームに加え、Tencent、Nexon、EA Sportsなどの大手企業からライセンスを取得したゲームも配信しています。その中には『League of Legends』、『Call of Duty®』、『FIFA』などの有名タイトルも含まれており、各市場に合わせてローカライズして提供しています。

同社初の自社開発モバイルゲーム「Free Fire」は、Google PlayとApp Storeを合わせて、世界で3番目にダウンロードされ、「バトルロワイヤル」のジャンルでは世界で最もダウンロードされました。このゲームは東南アジアで多くのシェアを占める低スペックスマートフォンでも軽快に動作するよう作られています。

Garenaの収益化モデルは、ゲームを無料でダウンロードしてプレイできる「フリーミアム」モデルです。主にゲーム内アイテムを販売することで収益を得ています。ゲーム内アイテムの購入方法には自社で提供しているSeaMoneyという決済システムを利用することで、サードパーティーの決済システムに手数料を抜かれることなく効率的に集金できています。

Garenaは、オンライン/オフラインでのユーザーコミュニティの構築やesports活動にも注力することで、ユーザーのエンゲージメントを高めユーザーの獲得と維持を促進しています。このこともあり、純粋なゲーム事業ではなく、デジタルエンターテインメント事業という扱いをしています。

この事業セグメントは3つの中で一番の稼ぎ頭で、ユーザ数は今も尚高い推移で増加しています。

eコマースShopee

Shopeeは、東南アジア最大のeコマースプラットフォームで、2019年には東南アジアと台湾で最もダウンロードされたアプリです。C2CとB2Cの両方のハイブリッドな市場を提供しています。

東南アジアのインターネット利用は、中国同様スマートフォンが主流となっており、Shopeeもモバイル中心でソーシャルに焦点を当てたマーケットプレイスとして作られています。

Shopeeプラットフォームは、統合された決済・物流インフラと包括的な販売者サービスを備えており、これは海で囲まれた市場でサービスを提供する上で重要なソリューションとなっています。

収益モデルとしては取引手数料や販売者への有料広告サービスの提供、また特定の付加価値サービスに対して販売者に請求することで収益化しています。

Shopeeではユーザーエンゲージメントとソーシャル活動を強化する戦略の一環として、「Shopeeコイン」、「Shopee Live」、「Shopee Games」、「Shopee Feed」などの革新的なソーシャル機能やゲーミフィケーション機能を多数導入しています。これらの機能により、ロイヤルユーザーを増やすことに成功しています。

Shopee Live

流行のライブコマースで販売者が商品のプロモーションを行ったり、販売やブランド構築のために購入者とリアルタイムで交流することができます。

Shopee Games

個人またはグループでの報酬を獲得することで、アプリ内でのユーザー同士の交流を促進する様々なミニゲームです。この機能により、ユーザーのエンゲージメント、インタラクションを高めます。ゲーム会社らしい取り組みです。

Shopee Feed

ユーザーがトレンドや趣向のカテゴリに基づいて人気の商品を発見した際にいいねやコメントをすることで、エンゲージメントの増加を見込んだエンドツーエンドのエコシステムを構築しています。

コロナ禍で著しく売上を伸ばしているeコマース事業において、同社のこの事業セグメントは取引数YoY150%増加、総取引額YoY110%増加と、非常に大きな成長を遂げています。

もちろん、取引数が増えたことで売上高も前年同期比と比べ188%増加となっており、これまでデジタルエンターテインメント事業に頼っていた収益比に迫る勢いなのが以下のグラフから読み取れます。

フィンテック 『SeaMoney』

SeaMoneyは現在、ウォレットサービス、決済、クレジット関連のデジタル金融サービスなどを提供しています。これらのサービスは、AirPay、ShopeePay、ShopeePayLater、その他のデジタル金融サービスのブランドで東南アジアのさまざまな市場で提供されています。

2019年はSeaMoneyの効率的な成長を促進し、SeaMoneyのウォレット・決済サービスとShopeeプラットフォームの統合を進めてきました。また、オンラインおよびオフラインの加盟店数や種類を増やすことで、より幅広い商品やサービスに対応したモバイル決済ソリューションを提供することが可能になったことで、今後もより多くのユーザーの獲得を見込めます。

現在はまだ収益面で目立っていませんが、デジタルエンターテインメントとeコマースの成長とオフラインでのシェア拡大を起点に大きな成長が期待されます。シンガポールでのデジタル銀行ライセンス取得も進めており、今後はよりディープに金融事業を拡大させていくことが予想されます。

CAN-SLIM

名著「オニールの成長株発掘法」が提唱するCAN-SLIMを基に高い成長が見込める成長株か判断していきます。これを満たしていれば、高パフォーマンスあわよくばテンバガーを狙える可能性があります。

CAN-SLIMとは

上場して比較的日が浅い成長企業に対してこれから成長が期待できる企業か判断するために、過去に上手くいったケースをルール化してまとめたものです。それらの頭文字を合わせたものをCAN-SLIM(キャンスリム)と呼びます。

C = Current earnings(当期利益が良いか?)
A = Annual earnings(通年の利益が良いか?)
N = New product or service(新製品・新サービスを出しているか?)
S = Supply and demand(その銘柄の需給関係が良いか?)
L = Leader or laggard?(その銘柄が相場の先導役か?それとも出遅れか?)
I = Institutional sponsorship(機関投資家に好まれているか?)
M = Market(一歩さがって相場全体の地合いは良いか?)

これらルールに設けられた背景をより詳しく理解したい方は本著を一読することをお勧めします。

以下のルールでは各々の指標を満たしているかを確認していきます。オニールが提示している指標から少しアレンジしていますが、ハードルは上げています。

Current earnings(当期利益が良いか?)

  • 前年同期比で売上高EPS40%以上増加しているか
  • 直近3四半期で売上高EPS加速度的に増加しているか
  • 直近四半期の粗利率70%を超えているか
百万ドル単位 / https://stockanalysis.com/stocks/se/financials/?period=quarterly

前年同期比の売上高成長率は102%と高い数値を出しています。これは前述のeコマース需要が追い風となっていることが要因で、巣ごもりが続く今後も継続して大きな成長が見込めると予想されます。

ちなみに2019年の後半では成長率200%近くのパフォーマンスを出していますが、これはデジタルエンターテインメント事業のモバイルゲーム「Free Fire」がヒットしたことが要因です。モバイルゲーム市場の競争力は年々上がっており、今後同規模のヒット作を出せるかは予想しづらいため、eコマースやフィンテック事業の成長が非常に重要になると思います。

営業利益が赤字が拡大しているのでEPSもマイナス成長となっています。東南アジア市場は競合が多いことから販管費も多く掛かっています。研究開発費についてもゲームを自社開発していることもあり、一定のコストが必要です。

粗利率は30%前後と少し低いです。これはeコマース事業の物流コスト増加や銀行取引手数料の増加が影響しています。そのため、eコマース事業が成長している直近四半期では大きく下がっていますね。反対にデジタルエンターテインメント事業においては自社開発ゲームの収益増加によって、ライセンス料比率が軽減されるため粗利率が改善されているとのことです。

Annual earnings(通年の利益が良いか?)

  • 過去3年間で売上高EPS40%以上増加しているか
  • 過去3年間で売上高EPS加速度的に増加しているか
  • 年間でROE(自己資本利益率)が17%以上か
百万ドル単位 / https://stockanalysis.com/stocks/se/financials/

2017年10月の上場以降、99%→163%というかなり高い売上成長率となっています。2020年は2Qまで終わり平均で100%超えとなっていますが、2019年3,4Qの伸びが強かっただけに次期四半期はもう少し落ち着いた数字となる可能性が高いです。とはいえ、既に高いので下がっても尚十分な数字だと思います。

New product or service(新製品・新サービスを出しているか?)

  • 新興企業、新製品、新経営陣、新高値 の何れかを満たしているか

デジタルエンターテインメント事業では新作ゲームを随時配信しており、自社開発ゲームは次のヒット作を目指して現在も開発が進められています。eコマース事業では、ライブコマースをはじめエンゲージメントの高い機能をいくつも提供しており、オンラインショッピングに新たな付加価値を生み出しています。そして、両方でアプリがストアランキングで1位を獲得したり、月間アクティブユーザー、総ダウンロード数などで新記録を更新しています。株価も直近で新高値を更新中です。

Supply and demand(その銘柄の需給関係が良いか?)

  • 時価総額が大きすぎないか(100億ドル以下か)
  • 経営者が主要株主か

時価総額は744億ドルで小型株とは言えませんが、東南アジア諸国の市場獲得規模からみてもまだまだ成長余地のある規模です。筆頭株主は支援をしている中国企業のテンセントで約1/4を保有しています。次いでCEOのForrest Xiaodong Liさん、5番目にはCTOのGang Yeさんがいますね。

https://simplywall.st/stocks/us/media/nyse-se/sea

Leader or laggard?(その銘柄が相場の先導役か?それとも出遅れか?)

  • 利益率や売上増加率がずば抜けているか
  • 独創性ある製品を持ち、競合他社よりマーケットシェアを獲得できているか

N(=New product or service)の項目と被りますが、テンセントの支援の下で中国で成功している事例を東南アジア諸国にうまくローカライズして展開することで競争の激しいゲーム、eコマース市場でトップシェアを獲得してきました。また、eコマース事業では巨額な投資で地理的な課題であった海を跨いだ物流インフラを新たに構築し効率化できており、配送の品質と早さが強みになっています。

Institutional sponsorship(機関投資家に好まれているか?)

  • 機関投資家の株主数が増加しているか
https://www.chartmill.com/stock/quote/SE/ownership

機関投資家の保有率は約70%程度で四半期毎だと少しずつ増えている様子が伺えます。

まとめ

東南アジア諸国は地理的な課題が大きいですが、テンセントをバックにデジタルエンターテインメント事業で得た利益を集中的に投資し、物流インフラを含むeコマース事業を急成長させ東南アジア5ヵ国で売上規模No.1を誇るまで成長させた勢いはすごいですね。中国企業のノウハウやソーシャルメディアの活用、デジタルエンターテインメント事業でのエンゲージメントの上げ方などのベストプラクティスを流用することで急成長に繋がったのではないでしょうか。eコマースのシェアが拡大すると多くの店舗が同社の決済プラットフォームに乗っかることとなるため、オフライン決済の導入ハードルも下がり、今後フィンテック事業でも急拡大、急成長が期待できそうです。

東南アジアは個々の島国ですが、人口は中国やインドに並ぶほど多く市場規模も大きいです。もしこの市場のショッピングと決済を独占できたらテンバガーとなり得そうですね。

ASEAN Economic Dashboard – PwC

気になるのが米中摩擦による影響ですが、テンセントが支援している企業とはいえ中国企業ではないため、直撃する心配はないと考えています。ポートフォリオにeコマース銘柄を加える検討をしている方は、検討してみてもよいのではないでしょうか。

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