米国株紹介 Zillow (ZG) オンライン不動産検索サイト大手、不動産仲介および直接売買、ローン組成・運用をワンストップで提供|銘柄分析

Zillow Group, Inc.(ジロー・グループ)は、不動産売買と賃貸マーケットプレイスのオンラインプラットフォームを中心に不動産仲介および直接売買、不動産ローン組成・運用をワンストップで提供する不動産テックです。

2019年から本格的にiBuyer事業にも参入し、2019年は売上高成長率105.6%と伸び代が非常に高い不動産ハイテク銘柄です。今回、この数字に惹かれたので調べてみることにしました。

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企業情報

  • 名前:Zillow Group, Inc.
  • ティッカー:ZG
  • 交換:NasdaqGS
  • 設立:2004
  • 業界:インタラクティブメディアとサービス
  • セクター:メディア
  • 時価総額:172.58億ドル
  • 発行済株式:226.99m
  • ウェブサイト: https://www.zillowgroup.com

競合他社

  • 【RDFN】Redfin Corporation
  • 【CSGP】CoStar Group, Inc.

事業内容

不動産業は多くの仲介業者と煩雑な交渉・手続きが発生し、その度に手数料が加算される非常に効率の悪いものとなっています。Zillow Groupはテクノロジー・サービス・統合によって、この仕組みをシンプルなものへ変化させ消費者の時間、お金、ストレスを大幅に節約することで、不動産取引の頻度を加速させていくことを目標に不動産業界の一通りのサービスをオンライン上で提供しています。

Zillow Group Investor Deck 2020 – May 2020

中核となるのが不動産情報サイトの「Zillow」で掲載物件数は1億件以上、月当たりのUUは2億以上と米国最大の数を誇ります。家の外観や内部の各部屋の写真、広さや築年数などの基本情報は勿論のこと、過去の売買記録や周辺の売買事例、エリアの価格推移、学区情報などあらゆる不動産情報が含まれており、マップ上でビジュアル化されているため使い勝手のよいサービスとなっています。「Zillow Rentals」は同サイト内の機能として賃貸に対応しています。

また、1億件以上の物件から得たデータを基に独自の自動査定システム「Zestimate」を備えており、エリア内価格変動などの最新データを用いて物件の相対的な評価を確認することが出来ます。

他にも不動産エージェントを紹介する 「Zillow Premier Agent」、住宅ローンを申し込しこめる「Zillow Home Loans」、物件の買取額の提示を申請できる「Zillow Offers」など関連するサービスを提供し、それらを統合したプラットフォームを提供しています。

これらZillowのプラットフォームに加え、積極的なM&Aによる拡大も行っています。2012年に地図検索が強みの「HotPads」、2013年にニューヨークの物件情報に強い「StreetEasy」、2014年に最大の競合相手だった「Trulia」を買収しました。

そして、今回の売上高成長率105.6%の鍵となったのが「Zillow Offers」です。

これまでのZillowの売上構成は「Zillow Premier Agent」が全体の約7割を占めていました。通常、物件に対して複数の不動産仲介業者が付いています。ユーザは複数の仲介業者から一人を選ぶわけですが、この時に仲介業者は広告掲載課金をしてより選ばれやすい広告枠を落札できます。この課金システムが高い収益性を出していました。しかし、売上高成長率としてYoY25%前後を推移するくらいで成長率としては右肩下がりになっていました。しかし、2019年から本格始動した「Zillow Offers」が流れを変えます。

Zillow Offers」は不動産テック界隈でトレンドとなっているiBuyerと呼ばれる事業で、価格査定アルゴリズムを活用して売り手から直接物件を買い取り、その後転売するビジネスモデルです。つまり、これまで仲介業だったのに対して買取転売業を新たに始めたということです。

公式の説明動画

このビジネスモデルはパイオニアのOpendoorOfferpadをはじめとしたスタートアップ企業が先行して展開していましたが、大手のZillowが後発で参入した形になります。

Zillowは自身の持つ膨大な不動産情報やネットワークを最大限に活かせる上に、仲介業の蓋となるビジネスモデルへ自らが参入することで、競合優位性の維持したまま高い成長率を手に入れることに成功しました。

ちなみに参入当時は賛否が別れていたそうです。というのも、Zillowはこれまで在庫を持たない仲介業者で粗利率が90%前後と非常に利益率の高いビジネスモデルでした。そんな企業が多くの資本を必要とする在庫ビジネスを始めるということで、リスク上昇を懸念して当時の株価は下落しました。ハイリスクハイリターンな戦略なので当然のようにも感じますね。実際、直近四半期では粗利率は約半分下がった47%で営業キャッシュフローも一時赤字に転落しました。

新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルス大流行により、転居という大きなライフイベントの自粛やロックダウンのような強制的な制限から「Zillow Premier Agent」の広告課金ビジネスの売上が急落し、また「Zillow Offers」も在庫を抱えた上で身動きがとれなくなる懸念がされていました。しかし、ライフスタイルの変化や歴史的低金利もあり総数こそ下がったものの直近四半期ではアナリストの予想を上回る売上と利益になりました。

今後は、物件の内見が困難な現状を踏まえて3Dバーチャル内見を強化し「Zillow Premier Agent」と「Zillow Offers」の双方に追い風を吹き込んでいく言及しています。

業績推移

今回は事前調査で使っているGoogleスプレッドシートの内容をこちらに転載して見ていきます。まずは前回までの記事で掲げていた指標と同じものがこちらです。

コロナウィルスの影響やビジネスモデルの変更、元々投資に力をいれているのでEPSが低いのは許容ということで個々に見れば問題なさそうです。

2020Q2の売上高が落ちていて、YoYの売上高成長率が低い原因はコロナウィルスの影響なので一時的なものと考えて良いと思います。iBuyer事業に本格参入してからは成長率は加速度的に伸びていてまだまだ天井が見えていません。市場規模的にもまだまだ獲得余地はあるのでコロナウィルスや金利の影響が流れをどのように受けるかが鍵となりそうですね。

粗利率に関しては売上高とは反対に事業の成長と共に落ちています。これは前述の通り、高単価な在庫ビジネスに移行しているので今後も70%を超えることはないでしょう。この業界に詳しくないので適正値がわかりませんが、成長しているうちは様子見でよいと思います。

まとめ

競争の激しい不動産業界で既存の非効率な業態にイノベーションを起こし、利便性を上げることで業界シェアとブランドを確立していること、これにより不動産情報が集まり独自のアルゴリズムを通すことで付加価値を付けて圧倒的な優位性を作れていること、この2点は素晴らしいと思います。また、M&Aによる事業拡大やスピーディーな参入など機動力があることも好印象です。

コロナの影響が向かい風になっている業種で先行きがまだ不透明な部分はありますが、iBuyer事業の伸び代も十分にありますし、テンバガー候補として検討してもよいのではないでしょうか。

最後に、@coichikawaさんのiBuyerを絡めた不動産テックの流れをまとめられた記事がとても分かりやすく非常に参考になったので、この業界へ投資を検討する方は是非一読することをお勧めします。

【米国不動産テック】2019年5大トレンド総おさらい
2019年も残すところあとわずか。CB Insightsが8月に発表したレポートによると、米国の不動産テック企業に対する株式投資額の2019年累計額は4,000億円を上回り、過去最多の記録となる見込みです。
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